椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアは、椎骨(背骨)の間にある椎間板の一部が飛び出してしまう疾患で、頸椎(首)の椎間板が突出する「頸椎椎間板ヘルニア」、腰椎(腰)の椎間板が突出する「腰椎椎間板ヘルニア」などがあります。
加齢に伴って発症することが増えていきますが、とくに長時間のデスクワークをされている方、タクシーやトラックなどの運転手、姿勢の悪い方などに起こりやすいです。
言い換えますと、正しい姿勢で椅子に腰かける、歩行時に前かがみにならない、適度な運動などを行い、背骨に過度な負担をかけないことが大切になります。
椎間板ヘルニアでは、飛び出した椎間板によって神経が圧迫されることで、首や腰の痛みだけでなく、手足のしびれや力が入りにくいといった症状が出ることがあります。
そのため、痛みの原因や神経への影響を正確に見極め、症状に応じた適切な治療を選択することが重要です。
当院では、背骨やその周囲を通る神経について専門的な知識と診療経験を持つ「日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医」「日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医・指導医」が診療を行っています。
椎間板ヘルニアによる痛みやしびれでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
このような症状の方は当院をご受診ください
- 首や肩などに痛みやしびれがある
- 腰が痛い
- 握力が落ちてきた
- 腕の感覚が鈍くなった
- 手を思いどおりに動かせない
- お尻や太腿に痛みがある
- 足にもしびれが広がってきた
- 歩きにくい
- 排尿や排便がしにくい
頸椎椎間板ヘルニア
頸椎椎間板ヘルニアでは、飛び出した椎間板が首から腕へ向かう神経根を圧迫する場合と、脊髄そのものを圧迫する場合があります。
神経根が圧迫されると、主に次のような症状が現れます。
- 首や肩甲骨周囲の痛み
- 肩から腕、手指にかけての痛み・しびれ
- 首を後ろに反らすと症状が強くなる
- 腕や手に力が入りにくい
脊髄が圧迫された場合には、手先の細かな動作がしにくい、箸が使いにくい、ボタンを留めにくい、文字が書きにくい、歩行時にふらつくなどの症状が生じることがあります。進行すると、脚のしびれや排尿・排便障害を伴うこともあります。
こうした症状があるときは、レントゲン(X線)撮影やMRI検査などで診断をつけていきます。
治療に関していうと、まずは痛みを抑えるようにします。
首を動かすと痛みが強まることが多いので、症状が強いと頸椎カラーなどの装具を使って患部を固定することが有効なこともあります。
さらに、消炎鎮痛薬やブロック注射などで痛みを抑えます。
こうした保存療法だけでは症状が改善しないときは、手術を検討します。
原因
頸椎椎間板ヘルニアの主な原因は、加齢による椎間板の変性です。椎間板の中心にある髄核は本来水分を多く含んでいますが、年齢を重ねるとともに水分量が減少して弾力性が失われ、外側を囲む線維輪にも亀裂が生じやすくなります。この変性が進んだ状態で頸部に負荷がかかることで、髄核が線維輪を突き破って脊柱管内に飛び出し、脊髄や神経根を圧迫してしまいます。
また、以下のような要因も発症や悪化に関わっているといわれています。
- 長時間のパソコンやスマートフォンの使用によるうつむき姿勢
- ラグビーや柔道など、頸部に強い衝撃が加わるスポーツ
- 交通事故やスポーツによる外傷
- 喫煙による椎間板への血流低下
- 遺伝的に椎間板が変性しやすい体質
加齢が主な要因であるものの、姿勢や生活習慣によっては若い世代でも発症することがあります。
検査
問診で症状の部位や状態を確認したうえで、神経学的診察を行います。
痛みやしびれの分布、腕や手指の筋力、感覚、腱反射を調べ、どの神経が障害されている可能性があるかを判断します。
首を一定の方向へ動かしたときに腕の痛みやしびれが再現されるか、手指の細かな動作に問題がないか、歩行時のふらつきがないかなども確認します。
画像検査としては、まずレントゲン撮影で骨棘の有無や椎間腔の狭小化、頸椎の配列(生理的なカーブが失われていないか)を確認します。ヘルニアそのものの位置や大きさ、脊髄や神経根への圧迫の程度を評価するにはMRI検査が有用で、確定診断に用いられます。骨の状態を詳しく見る必要がある場合にはCT検査を追加することもあります。
MRIやCT検査が必要と判断した場合には、近隣の画像検査施設と連携し、速やかに検査を受けていただけるよう手配します。撮影後は当院で画像を確認し、診察所見と合わせて治療方針をご説明します。
手術を検討する場合や、症状の原因となっている神経根を特定したい場合には、神経根ブロックを診断的に行うこともあります。
治療
保存療法
必ずしも手術が必要になるわけではなく、多くの場合、まずは保存療法から開始します。ミロガバリンやプレガバリンなどの神経障害性疼痛治療薬や炎症や痛みを抑えるために消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使用します。頸椎カラーなどの装具を使って患部を固定することもあります。
痛みが強い場合には、痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬やステロイドを注射するブロック注射を行い、炎症を鎮めながら痛みの悪循環を断ち切ります。
痛みが落ち着いてきたら、体幹や下肢の筋力訓練、柔軟性の改善、姿勢・動作指導などの、リハビリテーション(運動療法)を行い、再発予防や姿勢の改善を図ります。
手術療法
こうした保存療法を数週間から数ヶ月続けても症状が改善しない場合や、手指の運動障害(巧緻運動障害)、歩行障害といった脊髄症状が進行する場合、あるいは排尿・排便障害を伴う場合には、手術を検討します。
代表的な術式には、頸部の前方からヘルニアを摘出して固定する前方除圧固定術(ACDF)、後方から脊柱管を広げる椎弓形成術などがあり、症状や画像所見、生活背景に応じて術式が選択されます。
近年では、内視鏡や顕微鏡を用いた低侵襲な手術が行われるケースも増えています。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアは、飛び出した椎間板が腰から脚へ向かう神経を圧迫したり、神経の周囲に炎症を起こしたりすることで、腰痛、臀部痛、脚の痛みやしびれなどが生じます。
歩行を続けると下肢の痛みやしびれが強まり、少し休むとまた歩けるようになる「間欠跛行」がみられることもあります。
原因
腰椎は体重を支え、日常生活のあらゆる動作で大きな負荷がかかる部位であるため、椎間板の変性が起こりやすい場所です。20~40歳代を中心とした比較的若い年代にも多くみられます。重い物を持ち上げる、中腰になる、腰をひねるなどの動作が発症のきっかけになることがありますが、明らかな原因がなく発症する場合もあります。
加齢による椎間板の変化だけでなく、遺伝的要因、喫煙、仕事やスポーツによる腰への反復負荷など、複数の要因が発症に関係すると考えられています。
多くの場合、以下のような生活習慣や身体への負荷が発症の引き金となります。
- 長時間のデスクワークなど、座位を長く続ける生活
- 前かがみの姿勢や中腰での作業
- 重量物を持ち上げる動作を繰り返す仕事
- 長時間の車の運転などによる腰への振動・負荷
- 激しいスポーツによる繰り返しの負荷
- 喫煙による椎間板への血流低下
- 肥満による腰椎への荷重増加
これらの要因が重なることで、発症しやすいのが腰椎椎間板ヘルニアの特徴です。
検査
問診で痛みやしびれの部位、歩行時の症状の変化などを確認したうえで、神経学的診察を行います。代表的なものに、仰向けに寝た状態で片脚をまっすぐ挙げていくと、太もも裏から下肢にかけて痛みやしびれが誘発される下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)があり、神経根の圧迫を評価する指標として広く用いられています。腰椎椎間板ヘルニア精査には、MRI検査が有用で、確定診断に用いられます。MRIが必要と判断した場合には、近隣の画像検査施設と連携し、速やかに検査を受けていただけるよう手配します。
治療
保存療法
腰椎椎間板ヘルニアが見つかっても、すべての患者さんに手術が必要になるわけではありません。
突出・脱出した椎間板は、時間の経過とともに身体に吸収され、小さくなることがあります。とくに、椎間板組織が大きく脱出したタイプでは自然に縮小することがあり、それに伴って神経周囲の炎症や脚の痛みが改善する場合があります。
治療においては、まず痛みを抑えることを優先します。神経の痛みを和らげる神経障害性疼痛治療薬(ミロガバリン、プレガバリンなど)や、炎症と痛みを抑える消炎鎮痛薬(NSAIDs)を主に使用します。
痛みが強い場合には、神経の周囲に局所麻酔薬やステロイドを注射するブロック注射を行い、炎症を抑えながら痛みを軽減します。
コルセットは、腰痛が強い時期に動作を補助する目的で一時的に使用することがありますが、すべての患者さんに必要なものではありません。
こうした治療によって急性期の痛みが軽くなったら、体幹・腰背部の筋力を強化する運動療法などのリハビリテーションを行い、再発予防や姿勢・動作の改善を図ります。あわせて、重量物の持ち方や座り方など、日常生活における腰への負担を減らすための生活指導も行います。
手術療法
保存療法を一定期間継続しても強い脚の痛みが改善せず、仕事、睡眠、歩行などの日常生活に大きな支障が続く場合や、下肢の筋力低下が進行する場合、排尿・排便の障害を伴う場合には、手術治療を検討します。
代表的な術式には、突出した椎間板を摘出するLOVE法(椎間板摘出術)や、内視鏡・顕微鏡を用いた低侵襲の椎間板摘出術(MED、PEDなど)があり、状態によっては固定術を併用することもあります。
